大手企業の新規事業研究|2026.03.08
大手企業の新規事業事例14選|100件の現場で見えた成功法則
大手企業の新規事業とは、既存の経営資源を活用しながら新たな市場や収益の柱を作る取り組みです。 本記事では、通信・自動車・製薬・金融...
Magazine
大手企業の新規事業研究
2025.10.04
トヨタの新規事業とは、自動車の枠を超えて新しい収益源を創る戦略的な取り組みです。
「100年に一度の大変革期」と言われる自動車業界。その中心にいるトヨタは、クルマを作る会社から「モビリティカンパニー」へと自らを再定義し、次々と新規事業を打ち出しています。
本記事では、トヨタの新規事業を網羅的に整理しつつ、新規事業コンサルティングの支援実績100件超を持つNewAce代表の視点から「大企業がイノベーションを仕組み化するポイント」を読み解きます。
自社の事業開発に活かせるヒントを、ぜひ持ち帰ってください。
なお、大企業の新規事業立ち上げプロセスの全体像を先に把握しておくと、トヨタの仕組みがなぜ優れているのかがより深く理解できます。
弊社サービスNewAceは、あなたのチャレンジを応援するコンサルタントの方向けのプラットフォームです。
案件のご紹介のほか、様々な相談も承っておりますので、是非下記よりご登録ください。

それでは、本章をチェックください。
目次
トヨタの新規事業は、単なる多角化ではありません。
「モビリティカンパニーへのフルモデルチェンジ」という経営ビジョンのもと、複数のプロジェクトが同時並行で動いています。まずは全体像を俯瞰しましょう。
2018年のCESで当時社長の豊田章男氏が宣言した「モビリティカンパニーへの変革」。これは「自動車メーカー」という自己定義を捨て、人やモノの移動に関わるあらゆるサービスを提供する企業へ転換するという意思表明です。
背景にあるのはCASE(Connected・Autonomous・Shared・Electric)と呼ばれるメガトレンド。既存の「クルマを作って売る」モデルだけでは成長に限界があるという危機感が、この構想を突き動かしています。
モビリティカンパニーとは「移動に関わるあらゆるサービスを提供する会社」。クルマの製造・販売はその一部に過ぎないという発想転換がトヨタの新規事業の起点です。
2026年3月時点で動いている主な新規事業を整理すると、以下のとおりです。
| 事業名 | 領域 | 概要 | ステータス |
|---|---|---|---|
| BE creation | 社内起業制度 | 社員のアイデアを7段階で事業化するスキーム | 運用中・年間200〜300件応募 |
| Woven City | 実証都市 | 静岡県裾野市のモビリティ実証都市 | 2025年9月開業・2026年度本格稼働 |
| KINTO | サブスクリプション | クルマの定額利用サービス | グローバル展開中 |
| MONET Technologies | MaaS | ソフトバンクとの合弁・移動最適化 | 自動運転シャトル実証中 |
| Toyota Ventures | CVC | アーリーステージのスタートアップ投資 | AI・再エネ等に投資拡大中 |
| Toyota Invention Partners | 戦略投資 | 国内スタートアップ向け・投資枠1,000億円 | 2025年9月設立 |
| 水素事業 | エネルギー | 燃料電池・水素エンジンの開発と社会実装 | 商用車から展開中 |
(出典:トヨタ自動車公式サイト、各社プレスリリースをもとに筆者作成)
私がNewAceで自動車業界の新規事業案件を扱う中で感じるのは、トヨタの動向が業界全体の「テーマ設定」に直結しているということです。Woven CityやCASEへの投資が発表されると、ティア1・ティア2メーカーからも連動するように新規事業案件が生まれます。

トヨタの新規事業を語るうえで欠かせないのがBE creation(ビークリエイション)です。社員のアイデアを段階的に検証し、事業化まで導く社内スキーム。その仕組みを掘り下げます。
BE creationの入口にあたるのが、社内公募制度「B-pro」です。毎年200〜300件のアイデアが集まるこの制度には、単なる「アイデア募集」にとどまらない仕掛けがあります。
応募のハードルを下げつつ、検証の質を担保する設計が、大量のアイデアを継続的に引き出しているのです。「社員からアイデアが出てこない」と悩んでいるなら、新規事業のアイデアが思いつかない時の探索ヒントも参考にしてみてください。
「応募しやすさ」と「検証の厳しさ」の両立こそがB-proの設計思想。心理的安全性の確保が、大企業の新規事業を止める「言い出しにくさ」を解消しています。
BE creationの最大の特徴は、7段階のステージゲート方式にTPS(トヨタ生産方式)の思想を融合させている点です。
各ステージでは以下が明確に定められています。
事業開発本部の中西本部長は「一つひとつ上がっていくTPSの考え方がこの仕組みに入っている」と語っています(出典:トヨタイムズ、2024年11月)。
このステージゲートの考え方はリーンスタートアップの手法とも共通する部分が多く、大企業に適用する際のヒントになります。
ステージが進むにつれ、事業を加速するための支援プログラム「E-biz」が用意されます。リスク管理、法務サポート、外部パートナーとの連携支援などが含まれます。
注目すべきは、AlphaDriveや才流といった外部の新規事業支援企業もBE creationに参画している点。
トヨタほどのリソースを持つ企業でも、新規事業の検証・グロースには外部の専門性が不可欠であることを示しています。
トヨタの新規事業の象徴的存在が、実証都市「Woven City」です。CASE・MaaSの各領域での事業展開やスタートアップ投資と合わせて、モビリティ新規事業の最前線を整理します。
Woven Cityは静岡県裾野市のトヨタ東富士工場跡地に建設されたモビリティの実証都市です。進捗を時系列でまとめます。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2024年10月 | Phase 1の建物竣工 |
| 2025年1月 | Phase 1の建築完了を正式発表 |
| 2025年2月 | 竣工式を実施 |
| 2025年9月 | オフィシャルローンチ。関係者とその家族が入居開始 |
| 2025年12月時点 | 企業・個人の計20者がインベンターズとして参加 |
| 2026年度〜 | 住人を増やし本格稼働。一般ビジター受け入れも予定 |
(出典:トヨタ公式プレスリリース、日経クロステック 2025年12月)
Phase 1では最終的に約300名が居住する計画で、自動運転やAI、IoTなどの先端技術を実生活の中で検証していきます。
Woven Cityのような実証型プロジェクトの基本設計については、PoCの進め方と実施手順で体系的に解説しています。
CASEの各領域では以下のような取り組みが並行して進んでいます。
トヨタのスタートアップ投資は3階層で構成されています。
| 投資主体 | ステージ | 投資規模 | 主な投資領域 |
|---|---|---|---|
| Toyota Ventures | アーリーステージ | 約460億円(2ファンド) | AI、ロボティクス、再エネ |
| Woven Capital | グロースステージ | 1号ファンド運用中 | モビリティ、スマートシティ |
| Toyota Invention Partners | 国内アーリー | 戦略投資枠1,000億円 | 国内スタートアップとの事業連携 |
(出典:ウーブン・バイ・トヨタ公式 2025年9月、Forbes Japan、日本経済新聞 2026年1月)
2025年だけで10社に新規投資し、次世代原子炉や地熱発電といったエネルギー領域にも食指を伸ばしています。総額30億ドル超のスタートアップ投資体制は、自動車メーカーの枠を完全に超えています。
こうしたオープンイノベーションの動向については、オープンイノベーションを成功させる秘訣と最新事例でさらに詳しく解説しています。
NewAceの主要クライアント業種には「自動車」が含まれ、CASEやMaaS関連の新規事業案件が増加傾向にあります。案件の80%が新規事業関連であり、モビリティ領域は特にコンサルタントのニーズが高いテーマです。

トヨタのBE creationやWoven Cityが優れた仕組みであることは間違いありません。しかし、ここで重要なのは「なぜこうした仕組みが必要なのか」という問いです。
裏を返せば、大企業の新規事業には共通する失敗パターンがあるということ。
大企業における新規事業の失敗原因は、突き詰めると3つの構造的な問題に集約されます。
トヨタイムズの記事でも、BE creationの前身にあたる取り組みでは「本業との連携が希薄」「やりたいことが先行し、机上の仮説で大きな投資判断をして後戻りできなくなった」という課題が率直に語られています(出典:トヨタイムズ、2024年11月)。
新規事業の撤退判断もまた難しいテーマです。「いつ、どの基準でやめるか」の設計については、新規事業の撤退基準の設定方法で詳しく解説しています。
トヨタは前述の3つの壁に対し、それぞれ明確な打ち手を用意しました。
| 構造的原因 | トヨタの打ち手 | 多くの企業がつまずく理由 |
|---|---|---|
| 資源の奪い合い | B-proで予算・人材を「本業と別枠」で確保 | 既存事業のロジックで新規事業を評価してしまう |
| 意思決定の遅延 | ステージゲートで判断基準と期限を明確化 | 「とりあえず検討」が繰り返され結論が出ない |
| 専門人材の不在 | E-bizで外部パートナーと連携 | 「社内でやるべき」という文化が外部活用を阻む |
重要なのは、トヨタですら外部の力を借りているという事実。BE creationでAlphaDriveや才流が参画しているように、新規事業の検証フェーズには社内にない専門性が必要です。
私はコンサルファーム時代から数えて、100件を超える新規事業プロジェクトに関わってきました。その経験から断言できるのは、外部人材が機能するかどうかは「起用する側」の姿勢で決まるということです。
機能するケースには共通点があります。事業オーナーのWILL(意志)が明確であること、そして外部人材に対して適切な権限委譲がなされていること。逆に「お手並み拝見」と丸投げされたプロジェクトは、どれだけ優秀なコンサルタントでも成果が出にくい。
NewAceでは登録コンサルタント100名以上がプロジェクトに参画し、継続率は85%を記録しています。高い継続率の背景には、案件マッチング時に「事業オーナーの本気度」を見極めるプロセスがあります。
ここからは、より具体的な話に踏み込みます。自動車業界やモビリティ領域の新規事業で、外部コンサルタントはどう活用されているのか。事業会社側とコンサルタント側の両面からリアルな情報をお伝えします。
自動車業界の新規事業に関わるフリーコンサルタント案件は、以下のような相場感で推移しています。
| 案件領域 | 月額単価の目安 | 求められるスキル |
|---|---|---|
| CASE戦略策定 | 150万〜300万円 | 戦略コンサル経験+自動車業界知見 |
| MaaS/モビリティサービス企画 | 120万〜250万円 | 事業企画+テック理解 |
| EV・電動化領域のPoC支援 | 130万〜280万円 | 技術知見+プロジェクトマネジメント |
| DX推進(新規事業部支援) | 120万〜200万円 | DXコンサル経験+業務改革 |
各領域の案件タイプや単価の全体像は、フリーコンサルの案件7種類を単価付きで解説した記事でさらに詳しくまとめています。
NewAceが取り扱う案件の平均単価帯は月額120万〜300万円。最高月額単価は300万円です。案件の95%がNewAce独自案件のため、他社エージェントとの競合がほぼ発生しません。
新規事業で外部コンサルの起用を検討する事業会社の担当者に向けて、成功のための5つのポイントを整理します。
外部コンサルの活用が初めてという方は、新規事業コンサルの仕事内容や活用ポイントの基本解説から読み始めると全体像がつかめます。
NewAceでは、事業会社に対して「新規事業における外部人材の活用ノウハウ」自体を提供しています。マッチングだけでなく、稼働後の月次面談や単価交渉代行を含むフォロー体制があるのはそのためです。
自動車・モビリティ領域の新規事業案件への参画を目指すフリーコンサルタントに求められるのは、以下の3要素です。
NewAceには、McKinsey・BCG・Deloitte・Accenture・PwC・EY出身の登録コンサルタントが100名以上在籍しています。新規事業に特化しているからこそ、あなたの経験が活きる案件に出会える可能性が高いと言えるでしょう。
フリーコンサルとしての独立準備の全体像は、フリーコンサル独立ガイド|準備から案件獲得までで体系的にまとめています。
ここからは、私自身の経験を交えてお話しします。コンサルファーム出身で、事業会社での新規事業立ち上げも経験し、現在はNewAceを通じて100件超のプロジェクトマッチングに携わってきた立場から、トヨタの取り組みに通底する3つの原則を整理します。
私がファーム時代に支援したある大手メーカーでは、新規事業は「エースの情熱」に完全に依存していました。そのエースが異動した途端、プロジェクトは消滅。仕組みがない新規事業は、人が変わった瞬間に終わるのです。
BE creationのステージゲートは、個人の情熱を「組織のプロセス」に変換する装置です。
これは私がNewAceの案件マッチングでも最も重視している観点。仕組みがある会社の案件は、コンサルタントにとっても成果を出しやすい。
新規事業を担う人材に必要な資質を体系的に知りたい方は、新規事業に向いている人の特徴7選もあわせてご覧ください。
社内だけで議論していると、どうしても「社内の論理」に縛られます。外部コンサルタントが介入することで、客観的なデータに基づく判断が可能になり、意思決定速度が劇的に上がるケースを何度も見てきました。
トヨタがBE creationに社外の有識者を審査に入れているのも、まさにこの効果を狙ったものでしょう。
トヨタのステージゲート方式は「失敗を小さく、早くする」設計です。大きな投資判断の前に、小さな検証を積み重ねる。
NewAceでもPoC段階からコンサルタントをアサインするケースが多いのは、この「失敗コストのコントロール」が事業会社にとって最も価値のある支援だからです。
主な新規事業には、社内起業スキーム「BE creation」、実証都市「Woven City」、サブスクサービス「KINTO」、MaaS事業の「MONET Technologies」、水素事業、CVC「Toyota Ventures」などがあります。自動車以外の領域にも幅広く展開しています。
トヨタの事業開発本部と先進技術開発カンパニーが共同運営する新事業創出スキームです。
社内公募「B-pro」で集まったアイデアを7段階のステージゲートで検証し、段階的に事業化を進める仕組み。毎年200〜300件のアイデアが応募されています。
2025年9月25日にオフィシャルローンチを迎え、トヨタ関係者とその家族が入居を開始しました。
Phase 1では最終的に約300名が居住予定で、2026年度から住人を増やし本格稼働する計画です(出典:トヨタ公式プレスリリース)。
自動車業界の新規事業プロジェクトに外部コンサルとして参画するルートは複数あります。
新規事業に強いフリーコンサルの働き方で紹介しているように、新規事業特化のマッチングサービスを活用すれば、CASE・MaaS領域の案件に効率よくアクセスできます。
戦略策定、PoC設計、PMO支援、市場調査などのフェーズで外部コンサルが活用されています。
NewAceでは案件の80%が新規事業関連で、月額120万〜300万円の単価帯で支援が行われています。
本記事で解説したトヨタの新規事業戦略から、3つのキーテイクアウェイをお伝えします。
第一に、新規事業は「仕組み」で回す。 BE creationのステージゲートのように、個人の情熱を組織のプロセスに変換する装置がなければ、イノベーションは属人的に終わります。
第二に、外部の専門性を恐れず活用する。 トヨタほどの巨大組織でも外部パートナーと積極的に連携しています。社内にないスキルを適切なタイミングで調達することが、意思決定の速度と精度を上げます。
第三に、失敗コストを設計する。 段階的な投資判断と小さな検証の積み重ねが、結果として大きな成功を生む確率を最大化します。
あなたが事業会社で新規事業を推進する立場なら、外部人材の活用を具体的に検討してみてください。
あなた自身がフリーコンサルタントとして新規事業領域に挑戦したいなら、まずは案件情報に触れることが第一歩です。
NewAceは「新規事業 × コンサルティング」に特化した案件マッチングサービスとして、事業会社とコンサルタントの双方を支援しています。
この記事を執筆した人

長尾 浩平
新規事業創出や事業戦略の専門家として、多様な業界での経験を持つコンサルタント兼起業家。 東京工業大学大学院 生命理工学研究科、および中国・清華大学大学院 化学工学科を卒業。グローバル企業において研究開発、新規事業企画、新市場参入戦略の立案、M&A支援、DXコンサルティング、営業戦略策定など、多岐にわたる業務を担当。業界を横断した豊富な経験を活かし、事業成長と競争力強化を支援する総合コンサルティングを提供。 2024年1月にVANES株式会社を創業し、企業の持続的成長を支援。変化の激しい市場環境において、戦略立案から実行支援まで一貫したアプローチで企業価値の最大化に貢献している。
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