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トヨタの新規事業の全貌とは?未来を変えるプロジェクト実例まとめ

事業開発プロの新たなキャリア

2025.10.04

自動車産業が「100年に一度の変革期」にある中、日本の巨大企業であるトヨタは、既存の枠組みを超えた新規事業を次々と展開しています。

本記事は、新規事業の立ち上げを担う担当者の方々が、トヨタの具体的な戦略やプロジェクト実例から、自社の事業開発のヒントを得ることを目的としています。トヨタが「クルマを作る会社」から「モビリティ・カンパニー」へと自己定義を変える中で、どのような事業戦略を描き、いかにしてイノベーションを組織から生み出しているのかを徹底的に解説します。


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それでは、本章をチェックください。

トヨタ新規事業の全体像と狙い

変革を前提とした事業戦略

トヨタは、事業のコアを従来の自動車製造から「モビリティカンパニー」へと戦略的にシフトさせています。この変革は、技術の進化と社会の変化に追従するだけでなく、自らが未来の移動と生活のあり方をデザインするという強い意志に基づいています。

この変革を推進するため、事業ポートフォリオは既存の「もっといいクルマづくり」や「TPS(トヨタ生産方式)」といった効率化戦略に加え、「新たな周辺事業」の拡大を明確に目標としています。

既存事業の再定義と連携

新規事業の拡大は、既存事業の延長線上にはありません。従来の強みであったハードウェア(クルマ)の製造・販売に加え、今後はソフトウェアやエネルギーを軸にした新しいバリューチェーンを構築することが掲げられています。

具体的には、BEV(電気自動車)や水素事業といった電動化分野を強化しつつ、その周辺で生まれるデータやエネルギーマネジメントの領域を新たな収益源と位置づけています。これは、事業の価値提供の範囲を「モノ」から「サービス」へと抽象度高く再定義する戦略です。

次世代に向けたビジョン策定

トヨタの新規事業戦略のビジョンは、CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)と呼ばれる技術的メガトレンドへの対応を核としています。このビジョンは、単に技術を開発するだけでなく、それらを統合し、人々の暮らしを豊かにする「システム」として提供することを目指しています。

次世代に向けた取り組みは、後述するMaaSやWoven Cityといった具体的なプロジェクトへと落とし込まれ、未来の社会実装を見据えた実証実験が進行しています。

クルマを超えるトヨタの新ビジネス実例

MaaSを核とした新サービス

トヨタの新規事業において、MaaS(Mobility as a Service)は最も重要な柱の一つです。配車サービス大手に加え、自動運転タクシー開発企業への出資を積極的に行い、サービスエコシステムの構築を急いでいます。

特に、ソフトバンクとの合弁会社であるMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)は、移動の最適化や多角的なモビリティサービスを提供するなど、MaaSの可能性を大きく広げています。カーシェアやサブスクリプションサービス、MaaSアプリの展開も、ユーザーの多様なニーズに対応するための具体的な取り組みです。

CASEの具体的な取り組み

CASEの各領域でも、具体的な事業化が進められています。

  • E(電動化):パナソニックとの連携強化や、EVの市販モデル公開に加え、水素事業といった多様な選択肢を追求し、環境負荷の低減とエネルギー構造の変革を目指しています。
  • S(シェアリング・サービス):上記MaaS事業と連動し、所有から利用へと移行するユーザーの価値観に対応するサービス開発に注力しています。

これらの取り組みは、ハードウェアの提供者としてだけでなく、移動体験そのものを設計するサービス提供者としての役割を確立しようとするトヨタの意図を示しています。

環境対応とサステナビリティ推進

新規事業は、単なる経済的価値の創出に留まらず、サステナビリティ(持続可能性)の推進とも深く結びついています。

例えば、新しい店舗や施設では、太陽光発電、蓄電池、LED照明、省エネ空調などを統合したエネルギーマネージメントシステム(BEMS)を採用し、電力消費量を最適にコントロールすることで環境負荷の低減を図っています。また、板金塗装工場での水性塗料の導入や、電子署名・電子保存による紙の削減など、細部にわたる環境への取り組みが事業全体で進められています。

デジタルとリアルを融合した街づくり戦略

Woven Cityの構想と進捗

トヨタが「モビリティカンパニー」への変革に向けた新しい価値創造の現場として推進しているのが、「Toyota Woven City(トヨタ・ウーブン・シティ)」プロジェクトです。ウーブン・バイ・トヨタが主体となって進めるこのプロジェクトは、単なる未来の都市モデルではなく、急速に進化する技術群を統合し、実環境で検証するための究極のPoC(概念実証)環境です。

2024年にPhase 1の建物が竣工するなど、着実に進捗しており、モビリティのテストコースとして機能することが期待されています。

テクノロジーによる暮らしの変革

Woven Cityは、都市全体をIoT技術によって接続するスマートシティとして設計されています。住宅、商業施設、オフィスビルにはセンサーが設置され、エネルギー消費や環境データをリアルタイムでモニタリングします。

このデータとデジタルツイン技術の活用により、都市インフラと生活サービスが連動し、エネルギー効率の最適化や住民の生活の質向上を目指します。スマートホームシステムによる照明や家電の自動操作なども、暮らしの変革の具体例です。

実証実験による課題抽出と改善

Woven Cityの戦略的な重要性は、個々の技術の優位性検証に留まらず、自動運転、IoT、AIといった技術が複合的に連携しあう「システムの相互作用」と、それが実際の社会的価値にどう影響するかを検証する点にあります。

この巨大な実証実験の成功には、自社リソースだけでなく、多くの企業や研究機関との連携が不可欠であり、オープンイノベーションを通じて革新的なソリューションの実証と社会実装を加速させています。

社内から生まれる革新プロジェクトとは

新規事業の立ち上げにおいて、アイデアの素晴らしさだけでなく、それを実現するための「組織的な仕組み」は不可欠です。トヨタの事例は、大企業がイノベーションを持続させるための組織戦略のヒントに満ちています。

社内起業プログラムの活用とトップの役割

大企業において、リスクを伴う新規事業の種は、既存事業の論理や「社内の発想や嫉妬心」といった見えない抵抗勢力によって潰されがちです。

ここで鍵となるのが、「コーポレート・インキュベーション」の充実です。トップのリーダーシップによって新規事業部門の努力を支援し、チャレンジしやすい仕組みを社内に作り出すことが求められます。

特に、リスクを冒して挑戦する社内起業家やその協力者に対しては、「相応の報酬・待遇」を与え、たとえ事業が失敗に終わったとしても、元の職場へ復帰する際には「高い評価」を与える処遇が重要です。この仕組みは、失敗をキャリアの傷としないことで、優秀な人材が安心してリスクテイクできる心理的安全性を担保します。

外部戦略リソースの活用:CVCの役割

技術の更新速度が極めて速い自動運転やロボティクス分野において、トヨタはコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)である「Toyota AI Ventures(TAIV)」を設立し、戦略的投資を進めています。

CVCの目的は、単なるキャピタルゲインではなく、投資元企業の事業分野との相乗効果(シナジー)を生み出すことです。これにより、比較的低リスク・低コストで先端技術や市場情報をいち早く収集し、自社の変革ビジョンを推進するための「技術保険」としての役割も担っています。

トヨタシステムズの挑戦

アイデアが創出された後の検証フェーズでは、専門的なサポート機能の強化が進められています。例えば、トヨタシステムズのDXクリエイティブデザイン部では、デザイン支援を通じて新規事業案の検証に貢献しています。

顧客との対話や現場調査を改めて実施するなど、机上の計画ではなく、現場主義に基づいた検証が進められています。また、xR技術(AR/VR/MR)を活用したモビリティワークショップや、デジタル技術を活用した予約システムなどを用いて、アイデアを迅速にMVP化し、市場からのフィードバックを得るサイクルの高速化を図っています。

挑戦を事業化へ結びつけるためのNewAceの活用

トヨタのような巨大企業でも、新規事業の立ち上げには「組織の壁」や「検証のスピード」という課題が伴います。成功の鍵は、アイデアを既存のしがらみから「守り」、市場への実装を「加速させる」仕組みを持つことです。

もし、あなたの会社で新たな事業アイデアが社内の論理に阻まれている、あるいは、市場検証(PoC)のフェーズで、デザイン思考とデジタル技術を統合した専門的なサポートが不足していると感じているなら、ぜひNewAceをご検討ください。

NewAceは、大企業の新規事業担当者が直面する特有の課題を理解し、アイデアの迅速な検証、社内合意形成の支援、そして事業化に向けた実行環境の構築を力強くサポートします。

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トヨタが描く未来の暮らしと社会の姿

自動運転とスマートライフ

Woven Cityが目指すのは、自動運転技術を核とした安全で快適なスマートライフの実現です。都市環境のデータとモビリティが連携することで、移動の最適化はもちろん、時間の使い方や生活の質全体が向上する未来が描かれています。これは、究極的には人とクルマ、そしてインフラが共生する未来社会のモデルケースとなるでしょう。

持続可能な社会インフラ構築

未来の暮らしは、環境との調和なくして成立しません。トヨタの新規事業は、BEVや水素といったクリーンエネルギーの普及に加え、Woven CityでのBEMS活用に代表されるように、エネルギー効率の最適化をサービスとして提供することで、持続可能な社会インフラの構築に貢献しようとしています。環境負荷低減は、もはやCSRではなく、新規バリューチェーンの一部として機能しています。

まとめ:トヨタ事例から学ぶ非連続な新規事業成功の鍵

トヨタの事例は、新規事業担当者の方々に対し、以下の重要な教訓を与えてくれます。

  1. 事業領域の再定義:「モノづくり」から「データとサービスの設計」へと、自社のコアコンピタンスを抽象度の高い概念へと引き上げること。
  2. 実環境での検証:Woven Cityのように、個々の技術だけでなく「システム全体の相互作用」と「社会的受容性」を同時に検証する場を持つこと。
  3. 挑戦の制度化:CVCによる外部連携の仕組みに加え、社内起業家を組織の抵抗から守り、挑戦を相応に評価する「コーポレート・インキュベーション」を制度として確立すること。

トヨタは、これらの戦略を通じて、既存事業の延長線上ではない非連続な成長を実現しようとしています。あなたの会社でも、これらの戦略的要素を参考に、未来を変える挑戦を加速させてください。

この記事を執筆した人

  • 長尾 浩平

    新規事業創出や事業戦略の専門家として、多様な業界での経験を持つコンサルタント兼起業家。 東京工業大学大学院 生命理工学研究科、および中国・清華大学大学院 化学工学科を卒業。グローバル企業において研究開発、新規事業企画、新市場参入戦略の立案、M&A支援、DXコンサルティング、営業戦略策定など、多岐にわたる業務を担当。業界を横断した豊富な経験を活かし、事業成長と競争力強化を支援する総合コンサルティングを提供。 2024年1月にVANES株式会社を創業し、企業の持続的成長を支援。変化の激しい市場環境において、戦略立案から実行支援まで一貫したアプローチで企業価値の最大化に貢献している。

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