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ソニーの新規事業が育つSSAPとは?制度設計と成功の型を完全解説

事業開発プロの新たなキャリア

2025.10.04

「新規事業を立ち上げろ」というミッションを課されながら、

  • 社内に新規事業の評価基準がない
  • アイデアは出るが、事業化まで到達しない
  • 事業開発ができる人材が育たない

といった壁に直面していませんか?既存事業が盤石な大企業ほど、こうした構造的な課題に直面しがちです。

本記事では、ソニーが社内のイノベーション創出を加速させるために生み出し、今や外部企業にも有償で提供されている新規事業支援プログラム「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」の全貌を徹底解説します。

SSAPがどのようにして、アイデアを事業に変え、そして「事業を生み出せる人材」を育成しているのか。新規事業担当者、経営企画部門の方は、ソニーの成功の型を自社に再現するための具体的なヒントを掴んでください。


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それでは、本章をチェックください。

目次

ソニーのSSAPとは

ソニーのSSAPは、単なるアイデアコンテストや研修プログラムではなく、持続的に事業を生み出すための「組織の仕組み」と「人材の育成」を体系化したシステムです。

SSAPのねらい:持続的な事業創出と人材育成

SSAPが目指すゴールは、目の前の事業アイデアを一つ立ち上げることだけではありません。その根底には「持続的に事業創出ができる組織づくり」と「事業創出できる総合的人材の育成」という二つの大きなねらいがあります。

新規事業の創出には、組織の土壌と、そこで挑戦する人材のスキルとマインドセットの両方が不可欠であるというソニーの哲学が反映されています。

支援体制の構造:二本柱の体系

SSAPの支援体制は、新規事業の成功に必要な要素を網羅するため、「組織開発・人材育成」と「事業創出支援」という二つの柱で構成されています。

  1. 組織開発・人材育成: 新規事業を生み出すための組織の構築、評価制度の設計、社員のスキルやマインドセットの向上を支援します。
  2. 事業創出支援: アイデアのコンセプトメイキングから、事業開発、推進に至るまでの具体的な実行を、ソニーの専門家が伴走してサポートします。

対象と選び方

SSAPの支援対象は、ソニーグループ内だけでなく、一般企業の新規事業ご担当者、運営事務局、そして人材育成担当者です。

特に「新規事業を評価するための軸が定まっていない」「社内公募プログラムの活性化に悩んでいる」「座学で終わらない実践型の研修を探している」といった課題を持つ組織に最適な支援が提供されます 。

ステージごとの支援:Stage Gate System

大企業が新規事業で失敗する要因の一つに「意思決定の遅さ」と「評価基準の不明確さ」があります。SSAPはこの課題を解決するため、体系化された「Stage Gate System」を活用します。

このシステムは、事業アイデアの発掘・育成・管理を行うプロセスであり、優れたアイデアをスピーディに社会実装するための仕組みとして構築されています。

Stage Gateによる事業判断の加速

Stage Gate Systemでは、事業創出までのフェーズを4つの「Stage」に分解し、各Stageの区切りに特定の評価基準を設定した「Gate」を設けています。

  • Gateの機能: その時点までに達成すべき成果やエビデンスを明確にし、次のStageへの進出(すなわち追加投資)の是非を判断します。
  • 効果: この仕組みにより、新規事業のリスクを段階的に管理しながら、事業判断のスピードを加速させることが可能になります。不明確な評価プロセスによる遅延を防ぎ、経営に求められるリスク管理とイノベーションのスピードを両立させます。

ソニーの新規事業の進め方と検証フロー:事業創出6フェーズモデル

SSAPの「事業創出支援」は、アイデアの着想から事業拡大まで、新規事業開発のすべてのフェーズに対応した6つの体系的なフェーズモデルで構成されています。プロジェクトチームは、この6フェーズのどこからでも支援を受けることが可能です。

アイデアの深掘りとビジネスモデル仮説構築(フェーズ1, 2)

初期の段階では、アイデアの量と質を高めることに注力します。

  1. 事業アイデア創出: マーケットインやプロダクトアウトなど多様なアプローチでアイデア創出を支援します。独自のフレームワーク「ビジネスモデルコア」を活用し、ニーズ検証を通じてコンセプトを整理し、ビジネス案としてブラッシュアップします。
  2. ビジネスモデル仮説構築: 利益を生む仕組みを設計し、事業規模を拡大するためのスケールシナリオや具体的な収支仮説を策定します。さらに、PoC(Proof of Concept)計画の策定を支援し、その後の検証に向けた社内承認取得もサポートします。

高速MVP(具現化)の実現と事業性検証(フェーズ3)

このフェーズは、ソニーの競争優位性が最も発揮される部分です。

  • PoC実行支援: 事業化経験が豊富なアクセラレーターがエビデンス収集を伴走支援し、投資判断に必要な情報の確度を高めます。
  • 高速具現化: ソニーのデザイナーがサービスや商品のUI/UXをデザインし、ソニーのエンジニアが事業アイデアを高速で具現化します。新規事業初期の「具現化の遅さ」というボトルネックを、社内最高レベルのリソースで解消します。
  • 実現性検証: 事業化に向けて不可欠な実現性(コスト、スケジュール、開発課題)の検証も同時に行い、机上の空論に終わらせません。

PoCから事業拡大へ:大企業特有の課題解決(フェーズ4, 5, 6)

PoCが成功した後も、大企業内では「スケールの壁」に直面します。SSAPはそこにも対応します。

  • 事業化準備(フェーズ4): サービス提供に必要な体制構築を支援し、既存事業にはないノウハウを補完するため、ソニーのマーケターや品質の専門家などをアサインします。
  • 事業運営(フェーズ5): 事業計画通りに売上が上がらない、運営体制が整わないといった課題に対し、ビジネス立ち上げ経験のある専門家によるPMO(プロジェクト管理)や経営管理を支援します 1
  • 事業拡大(フェーズ6): 顧客開拓、市場調査、海外展開支援など、事業を真の成長の柱とするための戦略的な拡大計画策定を支援します。

ソニーの新規事業制度が人を育てる理由:イントレプレナー育成戦略

SSAPは、事業創出と同時に「企業内起業家(イントレプレナー)」を育成することを目的としています。この育成戦略は、座学中心の研修とは一線を画しています。

実践とレビュー主義の徹底

SSAPの根幹を成すのは「徹底的な実践&レビュー主義」です。

プログラムの終了自体を目的とするのではなく、事業創出そのものを共通目標とします。これにより、参加者には切迫感と当事者意識が生まれ、「イノベーションごっこ」と呼ばれるような非実践的な活動を排除し、成果の見える化を重視します。たった3ヶ月という短期間で事業の作り方の全体像が身に付くよう設計されています。

徹底的な消費者視点と事業化検証トレーニング

育成プログラムのコアは、「徹底的な消費者視点を追求した事業化検証トレーニング」です。

新規事業担当者は、アイデア発想家ではなく、「事業仮説の厳格な検証者」として訓練されます。ビジネスモデルの仮説検証方法や事業計画策定といった基礎知識に加え、この検証を実践的に行うマインドセットが徹底的に植え付けられます。

ソニー専門家によるメンターの介在

育成と事業創出の各フェーズでは、ソニーの専門家であるアクセラレーターが伴走します。

特に事業化支援フェーズでは、マーケター、デザイナー、エンジニア、品質の専門家といった各分野のエキスパートが個別チームにアサインされ、既存事業にはないノウハウを補完する形で支援が行われます 1。この専門家による密度の濃いメンタリングが、事業の成功率と人材の成長を加速させます。

カスタマイズ可能な実践型トレーニングコース

SSAPは、企業のニーズに応じ、以下の実践型コースを提供しています。

トレーニングプランコアな学習内容期待される効果
顧客・価値設計トレーニング徹底的な消費者視点、顧客像と提供価値の仮説設定ビジネスアイデアの骨子をまとめる力
ビジネスモデル構築トレーニングビジネスモデルキャンバス、数値計画策定、ピッチ準備アイデアを磨き周囲に伝える力、事業プランへの昇華
商品企画コースソニーの商品事例に基づくコンシューマー向けビジネス企画の考え方実践的な商品化思考の習得

ソニーの新規事業が失敗しにくい仕組み:段階的リスク管理

ソニーのSSAPが新規事業の失敗リスクを低減させている最大の要因は、Stage Gate Systemを活用した「段階的リスク管理」の設計にあります。

Stage Gateによる段階的リスクコミットメント

大企業の新規事業が失敗する一つのパターンは、最初の承認で巨額な投資をコミットメントしすぎることです。SSAPのStage Gate Systemは、この課題を解消します。

  • 段階的な評価: Stage Gateにより、事業創出の各フェーズで明確な評価(Gate)を設け、次のStageに進むための段階的な追加投資の是非を判断します。
  • 投資効率の最適化: 少額の投資で検証を繰り返し、成功の見込みが高いものにのみリソースを集中させることで、リソース配分の効率化を図り、全体としてのリスクを抑制します。

早期撤退を可能にする判断軸

Stage Gateの評価基準は、次のステップに進むための判断軸であると同時に、撤退の判断軸としても機能します。Gateでの評価で、設定されたエビデンスや基準を満たさなかった場合、その時点で投資をストップする判断を迅速に行えます。

これは「失敗前提」というよりも、「失敗を早期に発見・遮断する」ための知恵であり、結果的に総体的なリスクを低減させます。

事業創出初期の固定費リスク低減(レンタル感覚の支援)

新規事業立ち上げ初期には、検証のためのエンジニアやデザイナー、マーケターを専任で雇う「固定費リスク」が大きな負担となります。

SSAPは、事業創出初期の育成と検証を、ソニーの専門家リソースを柔軟に活用することで、「レンタル感覚」で行える体制を提供しています。これにより、固定費の負担を抱えることなく、スピーディかつ高品質な検証を実現し、新規事業部門が抱えるリスクを大幅に低減させます。

ソニーの新規事業制度から学べる3つの再現ポイント

ソニーのSSAPモデルは、特定の企業文化に依存しない、再現性の高い成功要因を備えています。貴社が新規事業を成功させるために、SSAPから学ぶべき3つの再現ポイントを解説します。

再現ポイント1: 育成と事業化支援を統合する

SSAPが優れているのは、組織開発・人材育成(タテの成長)と事業創出支援(ヨコの成果)を二つの柱として完全に統合している点です。

多くの大企業は、研修(育成)と事業立ち上げ(成果)を分けて考えがちですが、SSAPは「事業創出という実践を通じて人材を育成する」という思想に基づいています。これにより、研修で学んだ知識が現場で使えないという問題を根本的に解消します。

再現ポイント2: 制度(仕組み)と文化(マインド)を連動させる

Stage Gate Systemという厳格な制度と、徹底的な実践&レビュー主義、消費者視点という**文化(マインドセット)**を連動させている点も重要です。

制度だけがあっても、挑戦する文化がなければ機能しません。逆に、文化だけでは、場当たり的な挑戦に終わります。SSAPは、明確なStage Gateという仕組みの上に、実践を重視するマインドセットを育成することで、両輪でのイノベーション創出を可能にしています。

再現ポイント3: 実行のスピードを最優先する仕組みを持つ

新規事業の検証において、実行スピードは生命線です。SSAPは、ソニーのトップレベルのエンジニアやデザイナーの力を活用し、アイデアの具現化(MVP/PoC)を高速化することで、検証のサイクルを劇的に短縮しています 1

自社内で新規事業を担うチームが、必要なリソース(特に技術やデザイン)に迅速にアクセスし、固定費化させずに活用できる体制を構築することが、成功への近道となります。

新規事業のプロフェッショナルを目指すならNewAce

ソニーのSSAPモデルは、新規事業成功のための理想的な「型」を提供してくれます。しかし、この高度な仕組みを自社の組織や文化に合わせて導入・運用するには、外部の専門的な視点と実践的なノウハウが必要です。

NewAceが提供する価値

NewAceは、ソニーSSAPのような成功事例の徹底的な分析に基づき、貴社が抱える新規事業の課題を解決し、再現性の高いイノベーション創出システムを構築するための支援を提供します。

私たちは、単なるコンサルティングに留まらず、新規事業担当者が直面する「スキル不足」「組織の壁」「評価システムの課題」を乗り越えるための実務的なサポートを行います。

NewAceで得られる知見とスキル

NewAceのプログラムを通じて、あなたは以下の知見とスキルを習得できます。

  • Stage Gate Systemに相当する、自社に最適な「新規事業の評価・承認プロセス」の設計スキル
  • 座学ではなく、市場・顧客と徹底的に向き合う「実践型事業化検証」の推進ノウハウ
  • 既存事業のしがらみに囚われず、アイデアを高速で具現化するためのリソース活用術
  • 組織全体のイノベーションマインドを醸成し、挑戦を文化にするための戦略

自社への展開と実務への活かし方

NewAceは、ソニーを含む他社の成功事例を貴社の状況に合わせてカスタマイズし、すぐに実務に活かせる形で提供します。

  • 社内展開の支援: 貴社向けのイントレプレナー育成プログラムや、社内ビジネスコンテストの企画・運営を支援し、SSAPが実現したような「事業を生み出せる組織」への変革をサポートします。
  • 実務に活かす方法: プロジェクトに伴走する形式で、新規事業のアイデア発掘、検証、そしてPoC推進を実務レベルで支援するため、学んだノウハウが単なる知識で終わることはありません。

新規事業のプロフェッショナルとして、ソニーSSAPが実践する成功の型をあなたの組織に導入し、事業を次のステージへと進めたい方は、ぜひNewAceにご相談ください。

まとめ:ソニーSSAPの成功の型をあなたの組織に活かすために

ソニーのSony Startup Acceleration Program(SSAP)は、新規事業を成功させるために必要な要素を全て網羅した、極めて洗練されたシステムです。

その成功の鍵は、Stage Gate Systemによる「段階的リスク管理と意思決定の加速」と、徹底した実践&レビュー主義に基づく「イントレプレナーの育成」の統合にあります。

特に、

  1. Stage Gate Systemを導入し、意思決定のボトルネックを解消すること
  2. 育成を「座学」から「実践的な事業化検証」へとシフトすること
  3. 初期の検証フェーズにおける固定費リスクを低減し、実行スピードを最優先すること

これら3つのポイントは、大企業の新規事業担当者が今すぐ自社に持ち帰るべき、最も再現性の高い知恵です。

このソニーの成功の型を、貴社の組織特性に合わせて具体的に実装し、事業と人材の成長を両立させたいとお考えなら、ぜひNewAceにお任せください。私たちは、貴社が持続的なイノベーションを生み出す組織へと変革するための最適なパートナーとなることをお約束します。

この記事を執筆した人

  • 長尾 浩平

    新規事業創出や事業戦略の専門家として、多様な業界での経験を持つコンサルタント兼起業家。 東京工業大学大学院 生命理工学研究科、および中国・清華大学大学院 化学工学科を卒業。グローバル企業において研究開発、新規事業企画、新市場参入戦略の立案、M&A支援、DXコンサルティング、営業戦略策定など、多岐にわたる業務を担当。業界を横断した豊富な経験を活かし、事業成長と競争力強化を支援する総合コンサルティングを提供。 2024年1月にVANES株式会社を創業し、企業の持続的成長を支援。変化の激しい市場環境において、戦略立案から実行支援まで一貫したアプローチで企業価値の最大化に貢献している。

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