大手企業の新規事業研究|2026.03.08
大手企業の新規事業事例14選|100件の現場で見えた成功法則
大手企業の新規事業とは、既存の経営資源を活用しながら新たな市場や収益の柱を作る取り組みです。 本記事では、通信・自動車・製薬・金融...
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大手企業の新規事業研究
2025.12.24
関西電力の新規事業とは、エネルギー事業を基盤としながら情報通信・不動産・地域創生など多角的に展開する成長戦略の総称です。
同社は1990年代から非エネルギー領域への投資を進め、情報通信事業で売上約3,000億円、生活ビジネスソリューション事業で約2,000億円を達成。10電力会社の中でも突出した事業多角化を実現しています。
その成功を支えるのが「両利き経営」の実装です。
既存事業の深化と新規事業の探索を組織的に両立させる仕組みは、大企業のイノベーション推進の教科書とも言える存在でしょう。
本記事では、関西電力の新規事業の全体像から、起業チャレンジ制度の仕組み、そして新規事業案件100件以上を支援してきたNewAce代表の視点による「外部人材活用の実装法」まで、網羅的に解説します。
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それでは、本章をチェックください。
目次
関西電力グループは、約100社で構成される企業グループです。エネルギー・送配電を祖業としながら、情報通信事業や生活ビジネスソリューション事業を中核事業に育て上げてきました。
ここでは、新規事業の全体像を俯瞰します。
関西電力の新規事業の歴史は、1990年代にさかのぼります。電力自由化を見据え、自社の通信インフラを活用した情報通信事業に参入したのが始まりです。
その後、不動産開発やエネルギーサービスなど、領域を段階的に拡張。2023年7月にはイノベーション推進本部を設置し、100名超の専任体制で新規事業創出を加速させています。
関西電力の新規事業は「突然の多角化」ではなく、30年以上にわたる段階的な拡張の結果である。
関西電力グループの新規事業で最大の成功事例が、電気通信事業者オプテージを中心とする情報通信事業です。売上高は約3,000億円に達し、グループの中核事業の一角を占めています。
もともと電力供給のために敷設した光ファイバー網を通信事業に転用するという発想が出発点でした。自社インフラという「遊休資産」を活用した典型的な新規事業です。
| 事業区分 | 代表的な企業・サービス | 売上規模 |
|---|---|---|
| 情報通信 | オプテージ(eo光など) | 約3,000億円 |
| 生活・ビジネスソリューション | 関電不動産開発ほか | 約2,000億円 |
| 新規事業(探索段階) | TRAPOL、E-Flow、HSDC事業 | 成長フェーズ |
現在の関西電力は、さらに新しい新規事業領域への投資を加速しています。注目すべきは次の3つです。
こうした大企業の新規事業がどのようなプロセスで立ち上がるのかについては、新規事業の立ち上げプロセスを実践的な8つのステップで解説した記事も合わせてお読みください。
「NewAceが支援する新規事業案件でも、通信・エネルギー領域のクライアントは非常に多い。関西電力の事例は、インフラ企業が新規事業を本業級に育てる『型』として、他業種にも応用可能です。」
関西電力の新規事業が本業級に成長した背景には、「両利き経営」の組織的な実装があります。理論と実践がどう接続しているのかを見ていきましょう。
両利き経営(Ambidexterity)とは、スタンフォード大学のチャールズ・オライリー教授らが提唱した経営理論です。
既存事業を磨き込む「知の深化(Exploitation)」と、新しい可能性を模索する「知の探索(Exploration)」を同時に行うことを指します。
多くの大企業は「深化」に偏りがちです。短期的な収益を優先するあまり、探索への投資が後回しになる。この構造的なジレンマを、組織設計で解決するのが両利き経営の核心です。
両利き経営の本質は、理論ではなく「組織設計」にある。探索活動を既存事業の論理から守る仕組みがなければ、新規事業は社内で潰される。
関西電力のイノベーション推進本部 副本部長・浜田誠一郎氏は、同社のアプローチを「振り子的な両利き」と表現しています(出典:Biz/Zine、2024年2月)。
完全に分離するのでも、完全に統合するのでもない。探索段階では本体から距離を取り、事業が軌道に乗った段階で本体に近づける。この振り子のような距離感の調整が、関西電力の特徴です。
なお、探索初期フェーズでの仮説検証方法については、リーンスタートアップの活用事例と注目される理由で詳しく解説しています。
関西電力は2021年に策定した「関西電力グループ経営理念 Purpose & Values」で、「挑戦」の英訳に「Innovation」を当てました。「Challenge」ではなく「Innovation」を選んだ点に、同社の本気度が表れています。
組織文化の醸成は制度設計と並ぶ重要な要素です。トップが「挑戦=イノベーション」と定義することで、新規事業への取り組みが「特別なこと」ではなく「会社の当然の活動」として位置づけられています。
NewAceが支援する案件の80%は新規事業関連。大企業の新規事業担当者から寄せられる相談で最も多いテーマが、まさに「探索活動を既存事業部門からどう守るか」です。

両利き経営の思想を制度として具現化したのが、1998年から続く「起業チャレンジ制度」です。現在は「SPARK」として進化を遂げています。
SPARKの審査は段階的投資(Stage-Gate)の原則に基づいています。アイデアの時点で大きな投資を行うのではなく、段階ごとに事業の確度を検証する仕組みです。
| 段階 | 内容 | 期間 |
|---|---|---|
| 予備審査 | 書類・面接による初期スクリーニング | 約1ヶ月 |
| FS(フィージビリティスタディ) | MVP設計と初期顧客検証 | 約6ヶ月 |
| 最終審査 | 推進委員会による事業化の可否決定 | — |
合格すると応募者を社長とするベンチャー会社が設立されます。応募経路は「フリー型」(自由な発想)と「テーマ型」(既存資産の活用)の2種類。戦略的なポートフォリオ管理が行われています。
FS段階でのPoC(概念実証)の進め方については、PoCの実施手順と事例を解説した記事も参考になります。
起業チャレンジ制度で事業化に至るには、以下の5つの基準をクリアする必要があります。
事業計画の作り込みに悩む方には、稟議が通る新規事業の計画書の書き方ガイドがヒントになるでしょう。
「3年で単年度黒字」という財務規律は、探索段階の事業にとって厳しい基準である。しかし、この規律があるからこそ、「仮説検証のスピード」が自然と上がる設計になっている。
制度の最大の特徴は、「リスクとセーフティネットの両立」です。応募者は100万円以上を自己出資し、最大49%まで株式を保有できます。一方で、最大5年間の出向期間終了後は原則として出向元への復職が保証されています。
このバランスが、「失敗しても戻れる」安心感と「自分のお金を投じている」当事者意識を両立させています。これまでに9社が輩出され、うち3社がイグジット(1社はグループ外へ売却)を達成しました。
「自己出資と復職保証の両立は非常に巧みな設計です。NewAceでフリーコンサルタントの方と話していても、独立に踏み切れない最大の理由は『失敗時のリスク』。関電の制度は、この心理的障壁を組織的に解消しています。」

関西電力の成功事例は印象的ですが、同様の制度を導入しても新規事業が頓挫する企業は少なくありません。
NewAceが100件以上のプロジェクトを支援する中で繰り返し目にしてきた、失敗の3つのパターンを共有します。
最も根深い問題が、既存事業部門と新規事業チームの対立です。既存部門には「限られた予算を新規事業に取られる」という不満が生まれやすく、新規チームの提案が社内で否定されるケースが頻発します。
関西電力はこの問題を、イノベーション推進本部という独立組織の設置で構造的に解決しました。しかし、多くの企業では新規事業が既存部門の「兼務」として運営され、意思決定の独立性が確保されていません。
「出島」を作るだけでは不十分。出島に独立した予算と人事権を付与し、既存部門の承認プロセスから切り離すことが不可欠。
新規事業の初期は赤字が前提です。しかし、四半期決算の圧力の中で「いつ黒字化するのか」という問いが早期に突きつけられ、本来6ヶ月必要なMVP検証が3ヶ月に圧縮されるケースを何度も見てきました。
関西電力の「3年で単年度黒字、5年で累損解消」という基準は、一見厳しく見えて実は合理的です。
初年度から黒字を求めるのではなく、3年というタイムラインを明示することで、探索に必要な時間を制度的に確保しているからです。
新規事業の撤退判断も含めたタイムライン設計については、新規事業の撤退基準と判断方法を解説した記事が参考になります。
大企業特有の2〜3年周期の人事ローテーションは、新規事業にとって致命的です。事業への深い理解を持つ担当者が異動し、後任に十分な引き継ぎが行われない。結果として、事業の方向性がブレ、推進力が失われます。
関西電力の起業チャレンジ制度では、発案者が最大5年間「出向」として事業に専念する設計になっています。これは人事ローテーションの罠を制度的に回避する仕組みです。
NewAceの継続率は85%。この高い数値の背景には、月次面談を通じてプロジェクトの継続リスクを早期に検知し、担当者交代時の引き継ぎ支援まで行う体制があります。
ここまで見てきた失敗パターンを突破するための有力な手段が、外部プロ人材の戦略的活用です。関西電力自身も2023年に副業人材を公募し、外部の知見を積極的に取り込んでいます(出典:日本経済新聞、2023年5月)。
関西電力は2023年、5職種6人の副業人材を国内外から公募しました。その狙いは、社内には存在しない専門性の獲得と、事業立ち上げのスピード向上です。
大企業には豊富な資本とブランドがある一方、新規市場における専門知識やスタートアップ的な速度感は不足しがちです。
この「速さ」と「専門性」のギャップを外部人材で埋めるアプローチは、関電に限らず多くの大企業で採用されています。
外部人材の活用は「人手不足の穴埋め」ではない。社内にない「速度」と「専門性」を戦略的に調達する経営判断である。
新規事業プロジェクトにおける外部コンサルタントの役割は、大きく3つに分かれます。
| 役割 | 適した人材タイプ | 活用フェーズ |
|---|---|---|
| 戦略立案支援 | 元MBB(McKinsey・BCG等) | 構想〜計画策定 |
| MVP設計・検証 | 元IT/SaaS・デジタル系コンサル | 計画〜初期検証 |
| 実行フェーズの推進力補強 | 元事業会社の新規事業経験者 | 検証〜スケール |
重要なのは、フェーズに応じて必要な人材タイプが異なる点です。戦略と実行を同一人物に任せるのではなく、段階ごとに最適な専門性を持つプロ人材を投入することで成功確率が上がります。
新規事業に求められるスキルセットの全体像は、新規事業開発に必要な6つのスキルを解説した記事で体系的に整理しています。
外部人材活用を検討する際、最初に気になるのはコスト感でしょう。
NewAce経由のフリーコンサルタントの平均単価帯は月額120万〜300万円。案件の80%が新規事業関連です。MBB・BIG4出身者を中心に、登録コンサルタントは100名以上。案件の95%がNewAce独自案件で、他社と競合しないマッチングを実現しています。
正社員を1名採用するコスト(年収+社会保険+採用費)と比較すると、3〜6ヶ月のプロジェクト単位で外部プロ人材を投入する方が、投資対効果が高いケースは多くあります。
特に新規事業の初期フェーズでは「必要な時に、必要な専門性だけ」を調達する柔軟性が重要です。
フリーコンサルの単価相場や年収の実態をより詳しく知りたい方は、フリーコンサルの年収と3,000万達成の条件を実データで解説した記事をご覧ください。
新規事業プロジェクトにフリーコンサルタントの活用を検討している方は、以下のリンクから案件例や登録フローをご確認いただけます。
ここからは、NewAce代表として新規事業プロジェクト100件以上に携わってきた一次情報をもとに、成功する組織の共通点をお伝えします。
私はコンサルティングファームでキャリアをスタートし、その後事業会社で新規事業の立ち上げを経験しました。その中で気づいたのは、コンサルタントが作る『戦略資料』と、事業会社の現場が求める『実行の推進力』には大きなギャップがあるということです。
コンサル側は美しいフレームワークで戦略を描きます。しかし事業会社の現場では、社内政治の調整、予算の確保、既存部門との連携といった泥臭い課題が山積しています。
このギャップを埋められる人材が、新規事業プロジェクトでは最も価値を発揮します。NewAceを立ち上げた原点も、まさにこの課題にあります。
コンサルファームから独立して事業会社を支援する側に回るキャリアパスについては、ポストコンサルのキャリアで後悔しないための意思決定ロードマップで詳しくまとめています。
100件以上のプロジェクトに携わる中で、成功する新規事業チームには明確な共通点がありました。
逆に、この3条件が欠けているプロジェクトは、外部からどれだけ優秀な人材を投入しても停滞するケースが多いのが実態です。
外部人材の投入だけでは新規事業は成功しない。「意思決定の速度」「役割の明確さ」「投資の規律」という組織条件が整って初めて、外部人材の専門性が活きる。
ある大手インフラ企業では、新市場への参入戦略の策定に着手していました。しかし社内にその市場の専門知識を持つ人材がおらず、構想段階で半年以上が経過していました。
NewAce経由で元MBBのフリーコンサルタントをアサインし、3ヶ月で市場分析と事業計画を策定。その後、実行フェーズに元SaaS企業のプロダクト開発経験者を追加でアサインし、6ヶ月でMVPをローンチ。初期顧客の獲得にまで至りました。
大企業の新規事業にフリーコンサルがどう関わるのか、案件の具体例をさらに知りたい方は大企業の新規事業案件例と戦略を解説した記事もご覧ください。
この事例のように、フェーズに応じて異なる専門性のコンサルタントを投入する「リレー型アサイン」はNewAceの得意領域。継続率85%の背景には、月次面談でプロジェクトの進捗と人材の適合度を常にモニタリングする体制があります。
情報通信事業(オプテージ等、売上約3,000億円)、生活・ビジネスソリューション事業(関電不動産開発等、約2,000億円)が中核です。
さらにVPP・蓄電池事業(E-Flow)、地域創生事業(TRAPOL)、ハイパースケールデータセンター事業(CyrusOneとの合弁)など、探索段階の新規事業も複数展開しています。
両利き経営とは、既存事業の深化と新規事業の探索を組織的に両立させる経営手法です。
関西電力は2023年にイノベーション推進本部(100名超)を設置し、出島モデルで探索活動を既存事業の論理から独立させることで実装しています。
グループ会社に3年以上勤務する従業員が対象です。
予備審査・FS(約6ヶ月)・最終審査の3段階ゲートを経て事業化が決定されます。合格時は100万円以上の自己出資が必要で、最大5年間出向してベンチャー会社の社長を務めます。
社内にない専門性と速度を確保する手段として有効です。
関西電力も2023年に副業人材を公募しています。NewAceの支援実績では案件の80%が新規事業関連であり、戦略立案・MVP設計・実行支援の各フェーズで外部コンサルタントが貢献しています。
新規事業コンサルの具体的な仕事内容については、新規事業コンサルの役割と活用ポイントを解説した記事で詳しく紹介しています。
NewAceの実績ベースでは月額120万〜300万円が平均的な単価帯です。
立案フェーズは200万〜300万円、実行支援フェーズは120万〜200万円程度が目安。プロジェクトの難度・期間・専門性の希少度により変動します。
本記事では、関西電力の新規事業の全貌を3つの視点から整理しました。
関西電力の事例が示しているのは、「仕組み」「文化」「外部との組む力」の3要素が揃って初めて、新規事業は本業級に育つということです。
NewAceは、新規事業に特化したフリーコンサルタント向け案件マッチングサービスです。案件の80%が新規事業関連、継続率85%。MBB・BIG4出身者を中心に、あなたの専門性を最大限に活かせるプロジェクトをご紹介しています。
事業会社で新規事業の外部人材活用を検討されている方も、まずはお気軽にご相談ください。
この記事を執筆した人

長尾 浩平
新規事業創出や事業戦略の専門家として、多様な業界での経験を持つコンサルタント兼起業家。 東京工業大学大学院 生命理工学研究科、および中国・清華大学大学院 化学工学科を卒業。グローバル企業において研究開発、新規事業企画、新市場参入戦略の立案、M&A支援、DXコンサルティング、営業戦略策定など、多岐にわたる業務を担当。業界を横断した豊富な経験を活かし、事業成長と競争力強化を支援する総合コンサルティングを提供。 2024年1月にVANES株式会社を創業し、企業の持続的成長を支援。変化の激しい市場環境において、戦略立案から実行支援まで一貫したアプローチで企業価値の最大化に貢献している。
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