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オープンクローズ戦略とは?成功事例を交えて活用方法を徹底解説!

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2025.05.22

オープンクローズ戦略って、実際どう使うの?任天堂やAppleがうまく使っているって聞いたけど…

自社のサービスについて、何をオープンにしてどこを守るか、その選択も企業の戦略のひとつです。曖昧な理解では、自社で開発した成果を他社に取られて、自社サービスが破綻するかもしれません。

今回はオープンクローズ戦略の基本から応用、導入時の注意点まで紹介します!自社戦略としてオープンクローズ戦略を採用している方、コンサルタントとしてこの戦略をフレームとして提案しようとしている方に、ヒントを提供する記事となっています。

この記事で分かること!

  • 開示と非開示の戦略思考
  • ビジネスへの落とし込み方
  • 成功を導く実務ポイント

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それでは、本章をチェックください。

目次

オープンクローズ戦略とは?定義と基本概念をわかりやすく解説

オープンクローズ戦略とは、会社の持つ技術やノウハウの「見せる部分」と「見せない部分」をうまく分けて使う戦略です。技術の一部だけを外に公開し、本当に大事な部分や自社の強みになる秘密は外には出しません。こうすることで、外部と連携して新しい市場や価値を生み出しながら、コア技術や利益の源泉は自社に残し、成長と競争力を両立できます。

  • 技術の一部を外部に公開するオープン戦略
  • 重要なコア技術を秘匿するクローズ戦略
  • 両者を組み合わせて収益と普及を両立
  • 競合他社との差別化と市場支配を実現
  • 外部との連携を通じてイノベーションを加速

大企業だけでなく、中小企業やスタートアップにも有効な戦略です。詳細を解説する前に、オープンクローズ戦略の代表的な型を紹介します。

4つの代表的な型

オープンクローズ戦略は、「どこを開放し、どこを守るか」という設計によって、その形が大きく変わります。ここでは、多くの企業が実際に採用している4つの代表的なパターンを解説します。

オープン&クローズ併用型

AppleのiPhoneを例にすると分かりやすいでしょう。iOSという根幹部分やハードウェア設計は自社内で厳密に管理していますが、アプリ開発キットやApp Storeの仕組みは世界中の開発者に開放しています。
これによってiPhone上で動くアプリの多様性が生まれ、ユーザーの選択肢が広がり、結果的にApple自身も大きな利益を得るというエコシステムが成立しています。

「自分たちだけの独自技術」と「みんなに使ってもらう仕組み」を両立させる戦略です。

完全クローズ型

コカ・コーラのレシピは長年、世界中で厳重に守られてきました。いくら他社が努力しても、本物の味は再現できないと言われています。

完全クローズ型の戦略では、競争力の核となる部分を外部に一切出さず、情報の漏洩や模倣のリスクを最小限に抑えます。その代わり、周辺ビジネスや連携の幅は限定されてしまうことも多いです。

完全オープン型

USBやBluetoothは、技術仕様を世界中に公開し、どのメーカーでも使えるようにしています。

これにより一気に普及が進み、世界標準のプラットフォームとなりました。競合も多くなりますが、標準を握ることで業界全体をリードする立場を確立しています。

選択的オープン型

「自社グループや特定パートナーにだけ技術を開放する」「用途や地域を限定してオープンにする」といった、“条件付きのオープン”です。

例えば大手家電メーカーが、自社グループのサプライヤーには部品技術を共有するが、競合他社には公開しないといった例がこれに当たります。
広げすぎず、でも囲い込みすぎない──両者のバランスを取るやり方です。

実際には、企業ごと・タイミングごとにこの4つを組み合わせて、より柔軟なオープンクローズ戦略が展開されています。

戦略立案から実行までのステップ

実際にオープンクローズ戦略を立案・実行する際は、次のステップを踏むことが一般的です。

  1. 技術・知財の棚卸し
     自社が保有するコア技術、周辺技術、ノウハウを洗い出します。
  2. 競争優位性の分析
     どの技術をクローズにするか、どこをオープンにするかを整理します。
  3. 開放・囲い込み対象の選定
     市場拡大を狙う技術、独占維持したい技術を明確にします。
  4. 知財戦略・契約設計
     オープン・クローズの範囲や条件を知財契約で具体化します。
  5. パートナー選定とエコシステム設計
     どの企業・団体と連携し、どのような市場を創るかを計画します。
  6. 運用・見直し
     市場や技術の状況変化に合わせて、定期的に戦略を見直します。

では、オープンクローズ戦略を自社で活用するために、詳細を見ていきましょう。

オープン戦略とクローズ戦略の違い

オープン戦略とは?特徴とメリット・デメリット

オープン戦略とは、自社の技術や仕様をあえて外部に公開する戦略です。他社やユーザーとの連携を通じて、市場の拡大や共創を狙います。オープン戦略の鍵は、「普及」と「共創」の加速です。

  • 普及スピードを高めやすい
  • 開発リソースを外部に分散できる
  • 標準化で優位性を築ける
  • 外部のフィードバックを得やすい

たとえば、Googleが提供するAndroidは代表例です。Android OSは、基本ソースコードをオープンにしています。その結果、世界中のメーカーが参入し、普及率が圧倒的になりました。他にも、オープンなAPIやSDKを公開することで、周囲の企業が製品やサービスを展開できます。

オープン戦略の実行で得られるメリットとデメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
市場シェアの急拡大
外部との連携で開発効率UP
エコシステムの主導権を握れる
パートナー企業の数が増える
技術が模倣されやすい
自社の差別化が難しくなる
利益確保が難しくなることも

実際、Androidは世界に普及しましたが、Google以外のメーカーにも恩恵が分散されました。つまり、「普及はするが、儲かりにくい」という構図になりがちです。

あなたの会社でもオープン戦略を使う場面はあるでしょう。ただし、コアの利益をどこで出すのかを考えずに進めると、思ったほど収益が上がらない可能性もあります。

このように、オープン戦略にはチャンスもありますが、リスクもあるのです。

クローズ戦略とは?特徴とメリット・デメリット

クローズ戦略とは、自社の技術やノウハウを外部に公開しない戦略です。競合他社から模倣されないよう、情報を囲い込むことが目的です。クローズ戦略の要点は「差別化」と「独占」です。

  • 他社に模倣されにくい
  • 独自性を保ちやすい
  • 高利益率を実現しやすい
  • 技術的なリーダーシップを維持しやすい

たとえば、コカ・コーラのレシピは完全非公開です。また、Dysonのモーター技術も徹底的に秘匿されています。これにより、高価格帯でもブランド価値を維持できています。

クローズ戦略の実行で得られるメリットとデメリットは以下の通りです。

メリットデメリット
価格競争に巻き込まれにくい
ブランド力を高めやすい
技術を資産化できる
長期的な収益性を確保できる
開発コストが全て自社負担になる
社内リソースに限界があるとスピードが落ちる
閉じすぎると孤立しやすい

クローズ戦略だけでは、イノベーションや共創が進みにくい側面もあります。つまり、守りには強いが、拡がりにくいのがクローズ戦略の特徴です。そのため、オープン戦略とのバランスが重要になってきます。

オープンクローズ戦略の策定・導入手順

オープンクローズ戦略を成功させるには、事前の設計がカギです。特に、どこを開き、どこを閉じるかの判断が重要です。

  • コア技術や独自資産の洗い出し
  • 公開しても優位性が崩れない領域の特定
  • 標準化できる技術や仕様の整理
  • 外部パートナーと連携すべき領域の選定
  • 知財で守るべき範囲の明確化

最初にやるべきは、自社の「コア技術」の特定です。

コア技術や領域の特定方法

オープンクローズ戦略では、コア技術を軸に全体設計を進めます。そのためには、まず「何が自社の強みか」を言語化する必要があります。コア技術の特定には、以下の観点が有効です。

  • 他社では再現が難しい技術か?
  • 顧客価値の中心に位置するか?
  • 高収益の源泉となっているか?
  • 特許など法的に保護できるか?

たとえば、AIスタートアップなら学習済みモデルの設計手法やデータ収集ノウハウが該当します。メーカーなら、高精度の加工技術や材料技術が中心になるでしょう。技術の再現性が低い、ユーザー満足度に直結する、社内にしかない知見やノウハウ、保護手段が存在する(特許、商標など)など、実際の企業でも、コア技術を軸に設計しています。

Appleは、OSとアプリの密接な連携をコアとし、外部には限定的に開放しています。一方、周辺機器やAPIはある程度公開し、開発者を巻き込んでいます。つまり、「何を武器にするか」を見極めることが、すべての出発点なのです。

コア技術の明確化ができれば、次に進むべきは「どこまでをオープンにするか」の判断です。

オープン領域・クローズ領域の選定ポイント

コア技術が見えたら、次は公開・非公開の線引きが必要です。「どこまで開くか」「どこを守るか」の選定が成否を分けます。この判断で意識すべきは、「自社が得るべき価値は何か」です。

  • 普及と市場支配を狙うならオープン寄り
  • 差別化と収益確保が主ならクローズ寄り
  • 短期で拡大、長期で収益のバランスを意識
  • パートナー企業との役割分担も考慮

たとえば、プラットフォームビジネスでは中核技術を囲い、周辺を開放するケースが多いです。

  • 普及のための技術・仕様を開放
  • 収益の要となる部分は非公開
  • 他社との連携が前提の部分はオープン
  • 競争力に直結する部分は秘匿

このバランス設計が、まさにオープンクローズ戦略の真髄です。「何を渡し、何を守るか」の見極めが企業の命運を左右します。

知財マネジメントの活用と注意点

オープンクローズ戦略と知財戦略は切っても切れません。特に特許や商標などの知財は、クローズ領域を守るための武器です。知財をどう活用するかが、戦略の実行力を決めます。

秘匿、特許、ライセンスの選択肢と使い分け

技術やノウハウを外部にどう扱わせるかは、「秘匿」「特許」「ライセンス」などの手段を使い分けることで実現します。

  • 秘匿:外部に一切公開しない(例:飲料のレシピやサーバ側アルゴリズム)
  • 特許:出願・公開するが、独占期間を活用(例:医薬品や基盤技術)
  • ライセンス:一定の条件下で他社利用を許可し、収益化や標準化を狙う(例:家電部品、半導体IP)

自社技術の価値や事業戦略、パートナーとの関係性によって、最適な出口戦略を選択する必要があります。

独占ライセンスと非独占ライセンスの違い

ライセンスには「独占」と「非独占」という大きな違いがあります。

  • 独占ライセンス:特定の企業だけに利用を許諾。他社排除や高額契約が可能。
  • 非独占ライセンス:複数社に許諾することで、規格化や市場拡大を目指す。

例えば、半導体IPのビジネスでは、戦略的パートナーには独占ライセンスを提供し、広く普及を狙う分野では非独占ライセンスを活用することが多いです。

メリットとデメリット

たとえば、ライセンス戦略を設計することで、オープンにしても利益を確保できます。Appleは特許で囲い込みながら、外部との連携で製品力を高めています。

メリットデメリット
特許で技術的独占を築く
契約で外部に制約を持たせる
商標でブランドを守る
クローズ技術を秘密保持で管理
出願しすぎるとコストが増加
開示しすぎると技術流出の恐れ
社内の管理体制が甘いと逆効果

知財は「盾」にも「刃」にもなるので、効果的に使うためには、法務と現場が連携したマネジメント体制が不可欠です。

オープン領域とクローズ領域のつながりの重要性

オープンクローズ戦略は「切り分け」だけでは不十分です。オープン領域とクローズ領域が有機的につながってこそ、真の効果が生まれます。単に技術を分けるだけでは、市場での支配力は築けません。

  • オープンで囲った開発者が、クローズ領域の価値を高める
  • 無料で広めた仕様が、有料製品への導線になる
  • API連携で外部を巻き込み、収益は自社が取る

たとえば、AppleはApp Storeを開放していますが、決済は全て自社で管理しています。このように、外部の力を使って、内部の価値を最大化する構造が大切です。

  • 外部の普及が自社の利益に直結
  • オープン部分からクローズ部分へ誘導
  • パートナーが勝ち、自社も勝つ設計
  • クローズ部分で収益の独占が可能

この構造設計が甘いと、普及しても収益が取れない状態になります。つまり、オープンクローズ戦略の本質は「設計の巧妙さ」にあります。単なる切り分けではなく、全体最適なシステムを設計しましょう。

オープンクローズ戦略のメリットと注意点

オープンクローズ戦略は、技術の「開放」と「囲い込み」を両立させる戦略です。そのため、適切に設計すれば、普及と利益の両方を手に入れることができます。

  • 広く使ってもらい、囲い込んで儲ける
  • 外部と連携しつつ、内部で価値を独占

このような両立ができる点が、最大の強みです。ここからは、具体的なメリットと、実行時に注意すべきポイントを見ていきます。

大量普及と高収益の両立を実現する理由

オープンクローズ戦略が注目される最大の理由は「矛盾の打破」です。普通は「普及」と「高収益」はトレードオフになります。

オープンにすれば拡がるが、儲からない
クローズにすれば儲かるが、拡がらない

しかし、この2つを同時に実現できるのがオープンクローズ戦略です。

  • 市場拡大と収益性を両立
  • 競争優位性を維持しやすい
  • ブランド力とパートナー関係を強化
  • 中長期での安定した利益を生みやすい

たとえば、任天堂のSwitchは一部仕様を開放し、ゲーム開発者を巻き込みました。一方で、プラットフォームや製造技術は厳重に囲い込んでいます。結果として、ゲームも普及し、本体も売れ、利益も取れたのです。

  • 普及部分は戦略的に開放
  • 利益部分は戦略的に秘匿
  • 顧客導線が設計されている
  • 外部が参加しやすい仕組み

このような設計により、企業は「拡がるのに儲かる」状態を作れます。それが、従来の戦略との圧倒的な違いです。

戦略実行時のリスクと注意すべきポイント

一方で、オープンクローズ戦略には実行リスクもあります。「線引きの甘さ」が、全てを崩壊させる要因になります。どこまで開くか、どこまで守るかの判断がブレると、以下のような問題が起きます。

  • 技術流出による競争力の低下
  • 外部パートナーとのトラブル
  • 収益がパートナーに流れる
  • 戦略の整合性が崩れる

たとえば、APIを無制限に開放してしまい、競合企業が模倣するケースは多いです。また、ライセンスの設計が甘く、外部が収益を独占してしまう例もあります。さらに、オープンとクローズを切り分ける内部体制が整っていないと、混乱を招きます。つまり、「戦略として設計できていないと機能しない」のです。

この戦略は、設計、運用、管理すべてが揃って初めて効果を発揮します。実行の際には、事業責任者・知財部門・技術部門が一体となって動く必要があります。「切り分けたら終わり」ではなく、「設計し続ける覚悟」が重要です。

オープンクローズ戦略の成功事例

ここからは、実際の企業がどのようにオープンクローズ戦略を活用しているのかを紹介します。成功企業の戦略を知ることで、自社導入のヒントを得ることができます。

  • Apple:囲い込みと開放の絶妙なバランス
  • 任天堂:エコシステム創造
  • 三菱電機:産業分野での知財活用
  • 知財を軸にしたオープンクローズの事例

それぞれの事例から、設計・運用・収益化の視点で学びましょう。

Appleの成功事例

Appleは、オープンクローズ戦略の代表的成功企業です。製品設計、OS、サービス、すべてに戦略が貫かれています。Appleの本質は、「囲い込みつつ、巻き込む構造設計」です。

  • ハードとソフトの統合で差別化
  • App Storeで開発者を巻き込む
  • OSはクローズ、APIは一部オープン
  • 利益の源は製品・サービスに集中

たとえば、iPhoneは自社設計のiOSでしか動きません。しかし、App Storeを開放し、世界中の開発者を取り込んでいます。開発者は自由にアプリを作れますが、販売や決済はAppleが管理しています。

  • 利用者は増えるが、収益はAppleに集中
  • ユーザー体験を一貫して管理
  • 外部に開放する範囲を戦略的に制限
  • 知財と設計で技術流出を防止

結果として、iPhoneは世界中で普及しつつ、高収益体制を築いています。このバランス感覚が、Appleの競争優位の源泉です。あなたの会社でも、「開放と囲い込みの導線」を設計すれば、Appleのように普及と利益を両立できる可能性があります。

任天堂のオープンクローズ戦略に学ぶエコシステム創造

任天堂は、オープンクローズ戦略を巧みに活用することで、家庭用ゲーム市場で圧倒的なブランド力と長期的な成長を実現してきた企業の代表例です。

同社は、まずゲーム機本体やOS、独自のコントローラーなど、コアとなる技術やユーザー体験の“核”となる部分を徹底的に自社管理しています。たとえば、Nintendo Switchのハードウェア仕様や通信システムは、外部には簡単に明かしません。これによって、模倣や安易な参入から自社の競争力を守っています。

一方で、ゲームソフトの開発環境やプラットフォーム(いわゆるSDKやライブラリ)、さらにはSwitch Onlineのサービス基盤などは、外部の有力なゲーム会社やクリエイターに積極的に開放しています。任天堂公式のパートナープログラムや開発支援体制を通じて、外部のソフトメーカーが自由に魅力的なゲームタイトルを開発できるようにし、その多様なソフト群がユーザーの支持を集めています。

この「囲い込み」と「開放」の使い分けによって、任天堂は自社ブランドの独自性を守りながらも、多くのパートナー企業や開発者を巻き込み、ゲーム市場そのものを拡大してきました。
とくに「任天堂のゲーム機でしか遊べない」魅力と、「多彩なゲームタイトルが集まる」開放性を両立させることで、ファン層を拡大し続けています。

三菱電機のFA(ファクトリーオートメーション)領域での戦略

三菱電機も、オープンクローズ戦略を産業分野で巧みに使っています。特に注目すべきは、FA(ファクトリーオートメーション)領域での戦略です。

  • 共通インターフェースを公開
  • 自社の制御技術や製品群は秘匿
  • オープン化でパートナー企業と連携
  • クローズ化で製品の価値と収益を確保

たとえば、MELSECシリーズは通信仕様の一部を公開しています。その一方で、制御アルゴリズムやソフトウェアは非公開です。

  • 現場のシステム連携を簡単にする
  • エンジニアに使いやすい環境を提供
  • コア技術や収益源は守り抜く
  • 他社製品と共存しつつ優位を保つ

この戦略により、産業分野での標準化と自社製品の優位性を両立しています。つまり、「外とつながりつつ、中は強くする」設計です。あなたの業界でも、似た構造を設計することで市場の主導権を握れるかもしれません。

知財活用の具体的な事例

知財の活用は、オープンクローズ戦略の実行を支える土台です。特に、技術やブランドを守るだけでなく、利益を生み出す源泉にもなります。以下に、実際の企業による知財活用の具体事例を紹介します。

  • IBM:特許ライセンスで安定収益を確保
  • トヨタ:燃料電池技術を選別して開放

IBMは、年間数千件の特許を保有し、そのライセンス収入だけで数千億円規模の利益を出しています。この仕組みは、技術をクローズ領域でしっかり守りつつ、ライセンスという形でオープンな収益源に変換している例です。

また、トヨタは燃料電池関連の技術の一部を公開しました。だれでも使えるように見せつつ、最重要の生産技術や部材技術は秘匿しています。これにより、業界全体を巻き込んで市場を拡大しつつ、供給やブランドで優位性を保っています。「開放しても主導権を失わない」という設計がポイントです。

オープンクローズ戦略では、知財の位置づけが重要です。守るべきもの、開放すべきものを知財視点で整理すれば、より堅牢な戦略が築けます。

弊社NewAceでも、過去オープンクローズ戦略に関する案件について携わったこともあります。オープンクローズ戦略戦略を自社に導入されたい企業様は、こちらから弊社宛にご連絡ください。選任のプロフェッショナルがご対応いたします。

また、こうした戦略案件をお探しのプロ人材の方も是非弊社までご連絡ください。

オープンクローズ戦略のリスクと注意点

オープンクローズ戦略は強力な武器である一方、運用を誤ると競争力低下や情報流出のリスクを招くこともあります。成功のためには、守るべき領域の見極めや社内体制、契約管理など、慎重な対応が欠かせません。ここでは、実践時に注意すべきポイントを解説します。

技術流出や競争力低下のリスク

オープンクローズ戦略を実行するうえで、最も注意すべきなのが「技術流出」と「競争力の低下」です。技術やノウハウを安易に開放しすぎてしまうと、模倣やコピー製品の拡大につながり、価格競争や利益率の低下を招く恐れがあります。一方で、逆にすべてを囲い込もうとすると、市場そのものが拡大せず、せっかくのパートナーシップや新規ビジネスの機会を逃してしまいます。

この両者のバランスを見極めることこそが、経営層や戦略担当者に求められる最大の課題です。「どこまで開放し、何を守るべきか」は、常に市場環境や技術動向、競合の状況を踏まえて再検討していく必要があります。

社内体制・契約設計の重要性

戦略を形だけで終わらせないためには、実際に動かすための社内体制が不可欠です。法務や知財部門、そして現場の技術担当者や営業部門が一体となり、情報共有や役割分担を明確にすることで、戦略が現場で適切に機能します。

パートナーとの契約では、特許ライセンスや共同開発契約、秘密保持契約など、多様な知財スキームを活用しつつ、将来的な技術応用や利用範囲についても柔軟な見直しが可能な体制づくりが重要です。市場や技術が変化する中で、契約内容をタイムリーにアップデートできるような仕組みを作ることで、長期的な競争力を維持できます。

ガバナンス設計の要点

オープンクローズ戦略を持続的に機能させるためには、社内外の「ガバナンス設計」が鍵となります。たとえば、公開する技術の範囲や利用できる分野、改変や再許諾の可否、さらにはライセンス期間など、細やかなルール設定が必要です。

「医療分野限定で利用」「期間を区切ったライセンス提供」「第三者への再許諾は禁止」といった条件を設けることで、自社の知財や利益を守りながら、信頼できるパートナーとの協業が実現できます。ガバナンスは“契約書”という形式面だけでなく、日々の運用やパートナーとの信頼構築、情報のモニタリング体制にも関わってきます。

まとめ:オープンクローズ戦略で競争優位を築くために

オープンクローズ戦略は、ただの技術戦略ではありません。それは、「市場をどう支配し、利益をどう得るか」というビジネス全体の設計です。

  • 技術の一部を開放し、普及を促進する
  • コア部分は徹底して囲い込み、収益を得る
  • 外部との共創でスピードと規模を拡大
  • 知財で全体の仕組みを守り、価値を最大化

Apple、三菱電機、IBMのように、成功している企業は「開放と囲い込み」を絶妙に使い分けています。あなたの会社でも、以下のステップで導入を検討してみてください。

  • 自社のコア技術や資産を洗い出す
  • 開放しても競争力を失わない領域を特定する
  • 知財で守るべき部分を明確にする
  • 利益導線を設計して、収益を逃がさない構造にする

この戦略は、一朝一夕でできるものではありません。ですが、丁寧に設計し、社内に浸透させれば、大きな武器になります。今こそ、あなたのビジネスに「開放」と「囲い込み」の視点を。「普及も利益もあきらめない」戦略で、競争優位を築いていきましょう。

この記事を執筆した人

  • 長尾 浩平

    新規事業創出や事業戦略の専門家として、多様な業界での経験を持つコンサルタント兼起業家。
    東京工業大学大学院 生命理工学研究科、および中国・清華大学大学院 化学工学科を卒業。グローバル企業において研究開発、新規事業企画、新市場参入戦略の立案、M&A支援、DXコンサルティング、営業戦略策定など、多岐にわたる業務を担当。業界を横断した豊富な経験を活かし、事業成長と競争力強化を支援する総合コンサルティングを提供。
    2024年1月にVANES株式会社を創業し、企業の持続的成長を支援。変化の激しい市場環境において、戦略立案から実行支援まで一貫したアプローチで企業価値の最大化に貢献している。

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